緑の党・政治選挙部スタッフの宮部彰さんが『テオリア』2017年8月10日号に書かれた論考、「東京都議選 安倍自民党の歴史的大敗北と都民ファースト圧勝 求められる「改革派としてのリベラル左派」の登場」を批判した、朴勝俊・松尾匡・西郷甲矢人のレポートです。
ポイント
・経済成長は無理だから増税を、という主張は根拠がなく、人々の支持も得られません。
・財務省流の財政危機・増税論よりも、安倍政権を超えるフェアな反緊縮政策を。
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緑の党・政治選挙部スタッフの宮部彰さんが『テオリア』2017年8月10日号に書かれた論考、「東京都議選 安倍自民党の歴史的大敗北と都民ファースト圧勝 求められる「改革派としてのリベラル左派」の登場」を批判した、朴勝俊・松尾匡・西郷甲矢人のレポートです。
ポイント
・経済成長は無理だから増税を、という主張は根拠がなく、人々の支持も得られません。
・財務省流の財政危機・増税論よりも、安倍政権を超えるフェアな反緊縮政策を。
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要約: 水野和夫氏の著書は左派陣営、とくに脱成長論者たちに広く読まれている。彼の議論は、資本蓄積が進む一方でエネルギー価格が高騰したことから、利子率=利潤率が低下し、「資本主義の終焉」が迫っているとするものである。「ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ」は定常状態への移行を迫っており、「成長教」に囚われた景気回復策である金融緩和はバブルをもたらすだけで無効であり、また財政出動も効果がない。求められるのは財政均衡であり、消費税増税を含む増税も必要である、とする。つまり、景気回復も経済成長も不可能だというものである。水野氏の議論は総じて論理の飛躍がみられるが、用いている主要な概念、すなわち「利子率=利潤率」、「交易条件」、「セイ法則」、「マネタリズム」をめぐって専門家らしからぬ誤解が見られるし、成長や脱成長を論じながら、名目GDPと実質GDPの区別さえも明確にしていない。また、ヘタなアベノミクス批判の予言はほとんどが外れている。極めつけは、彼が提示する具体的な政策が、増税による均衡財政であるということだ。実際の政治に関わる人々の中にも、彼の議論を信じる人が多いのは、不思議なことである。政治のアリーナにおいて、有権者の関心の中心はつねに経済回復である。水野和夫氏の脱成長論を鵜呑みにすることにより、左派・リベラルの政治勢力は戦う前に自滅することが懸念される。
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※ アイスランドはIMFを拒否したとした誤記(詳しくは、本ブログ11月8日投稿のエントリーをご覧ください)やちょっとした誤字を修正し、親切な説明がないとわかりにくい表現を修正しました。(2018年3月2日)
自由党の山本太郎議員とひとびとの経済政策研究会とのコラボで予定しております連続講座の第三回を下記のように開催します。今度は夕方からの時間帯になります。ご関心のあるかたは、リンク先の予約フォームより予約の上、ご参加下さい。
講師:山本太郎(参議院議員)、朴勝俊(関西学院大学教授)、松尾匡(立命館大学教授)、他
第3回 民主主義を救う経済政策とは何か? 経済政策の歴史と経済思想
日時:2017年9月16日、18:30~21:00
場所:キャンパスプラザ京都(JR京都駅から徒歩5分、ビックカメラ前)、2階ホール
http://www.consortium.or.jp/about-cp-kyoto/access
参加費:600円(学生無料、定員90人・要予約。学生無料)
主催: ひとびとの経済政策研究会・e未来の会
予約フォーム: https://ssl.form-mailer.jp/fms/092a0538516036
当日連絡(朴勝俊): 090-1149-4945
民進党の代表選挙が行われる機会に合わせて、安倍自民党と対決する野党のみなさんに、ぜひ採用していただきたい経済政策をまとめました。
本会共同代表松尾匡(立命館大学経済学部教授)が、著書『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店)やその後の講演で述べてきたことを中心に、本会での共同研究の成果をまとめたものです。
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内容要約
安倍自民党は、個々の政策にはいつも反対の世論が多いのに支持率が下がらない。有権者の関心のトップは常に福祉と景気にある。しかるに生活実感調査では、民主党時代に比べて安倍時代に改善が実感されている。長期不況で日本は貧困が蔓延して多くの人々が深刻に苦しんできたことが確認できるが、多くの客観データから、たしかに、民主党時代よりも安倍時代は事態が多少改善していることが確認できる。うまくいかない点は2014年の消費税増税の影響と有権者に容易に認識できるものが多く、自民党だけへの批判につながりにくい。
景気足踏みの主因は政府支出の抑制にあった。安倍首相もわかっているのか、総選挙で起死回生の大圧勝を狙って手を打ってきている。目下景気諸指標は順調で、それが狙い通りになる可能性は高い。野党はそれを想定した備えをしないと勝てない。
野党が勝つためには、自民党を上回る景気拡大政策を示す必要がある。これまでの野党の敗北の原因は経済や財政の縮小イメージにある。プライマリーバランス黒字化は至上命題ではない。財務省系や脱成長系の人々の助言を鵜呑みにしてはならない。
欧米においては、英国労働党のコービンや米国民主党のサンダースをはじめ、左派・リベラル派の経済政策はこぞって「反緊縮」である。数多くのケースで、彼らの政策は、中央銀行が国債を買い入れる金融緩和で作った資金で政府支出を増加させ、景気拡大をはかるとともに、企業・富裕層への課税や、介護・教育・医療・子育て等への支出によって人々の暮らしを支え、格差をなくすことを目指す。欧米では、左派系の各種の非主流派だけでなく、主流派のメジャー学術雑誌に論文が載る多くの優秀な経済学者が、こうした財政金融合わせ技政策を提唱している。
こうした政策が財政的にみて「不健全」ということはない。中央銀行を政府の子会社ととらえる「統合政府」の考え方をとれば、中央銀行が買い取った国債は、民間や海外に対する借金ではないのでこの世から消えたのと同じである。もちろんこうした政策にも歯止めが必要である。「インフレ目標」は、この歯止めとして位置付けなおすべきである。
このレポートでは、以上のような議論をふまえ、四点の経済政策提言を行う。
※ 図表番号のミスを修正。(2017年8月26日)
※ 32ページ目最後の2行のアイスランドについての記述を削除しました。詳しくは、本ブログ11月8日投稿のエントリーをご覧ください。(2017年12月1日)
※ 以前の修正で4ページに白紙の一ページが入ってしまったのを直しました。また、34ページの “A Modest Proposal” の訳を「最も穏健な提案」としていたのは、もちろん誤りですので、「穏健な提案」に修正しました。読者のみなさんにも、本レポートの一部を収録いただいた『消費者法ニュース』の関係者のみなさんにもおわびいたします。(2018年3月2日)