ニュース」カテゴリーアーカイブ

研究会スケジュールや更新のお知らせ

<レポート024> 緊急政策提言「ホルムズ海峡危機からひとびとの暮らしと⽣業 を救うための緊急対応提⾔〜エネルギー危機に対する⽣活防衛と産業維持のための政策」

アメリカとイスラエルによるイラン攻撃から始まった今次の中東での戦争にともない、ホルムズ海峡の通行困難から、原油価格の高騰や石油製品の不足がもたらされました。これを受けて、「ひとびとの経済政策研究会」では、この経済危機を乗り切るための緊急の経済政策を検討してきました。

検討しているあいだに、停戦合意の報道もなされる情勢になりました。このまま幸いにも無用の提言となる可能性も高いものと強く期待するところですが、やはり、残念ながらまだスムーズには停戦せず、危機が続く可能性もまた、低くない現実があると考えられます。

それゆえ、予定通り、この提言をここに公表することにします。世論や政治勢力のあいだで、検討の議論がいただけることを望みます。

なお、この提言を作成するにあたっては、日本共産党の「イラン戦争がもたらす物価高・資材不足から暮らしと営業を守るための緊急対策を求める要請」、れいわ新選組の政策関係者のみなさんのご意見、立命館大学経済学部吉岡真史特任教授のご教示・ご意見が大いに役立っています。ここに深く感謝いたします。
もちろん、あり得べき誤謬はすべて作成者の責任です。

以下、本提言の前書きを引用しておきます。

 戦争は、いかなる理由のもとでも許されるものではなく、民衆の生命と生活を破壊するものである。私たちは、アメリカのトランプ政権とイスラエルのネタニヤフ政権が始めた今回のイランとの戦争に対して強く抗議し、ただちに恒久的に戦闘行為が停止されることを求める。

 それに加えて今回の戦争で深刻なのは、ホルムズ海峡が通行困難になり、日本も含む多くの国で、燃料や原料資材の価格高騰や供給困難が引き起こされて、人々の生活や経済が危機にさらされた問題である。

 目下アメリカとイランが停戦に合意したとの報道もなされている。私たちはこの動きを歓迎し、一刻も早く真に停戦が実現することを期待する。しかし、現実には停戦が直ちに実現せず、戦闘が再燃するなど、紛争が長期化する可能性も否定できない。そのような事態は決して望ましいものではないが、万一そうなった場合に備えて、人々の生活と経済活動を守るための現実的な対応をあらかじめ準備しておく必要がある。

 このため、日本は軍事的対応ではなく、全方位的な平和外交を通じて緊張緩和に寄与するとともに、中東地域を含む多様な国・地域との関係を強化し、エネルギーや資源の調達の多角化を進めるべきである。また、今回の危機を契機として、化石燃料への過度な依存からの脱却を図り、再生可能エネルギーへの転換を加速することが不可欠である。

 その上で、紛争が続いた場合の、目の前のひとびとの暮らしと生業の危機に緊急に対応するために、ここに政策提言をまとめた。

2026年7月1日

ひとびとの経済政策研究会

松尾匡・朴勝俊・西郷甲矢人・橋本貴彦・熊澤大輔

ダウンロード↓
economic policy report 024

研究ノート:朴勝俊・松尾匡「ある期間の名目円ドル為替レートが米日金利差でよく説明できるのはなぜか」『立命館経済学』73巻3号、2024

本会共同代表の朴勝俊関学教授と私、松尾匡立命館大教授の共著の研究ノート「ある期間の名目円ドル為替レートが米日金利差でよく説明できるのはなぜか」が公表されましたのでご紹介します。

ここでは、円ドル相場が、10年もの国債の利回り差という意味での日米の長期金利差によってよく説明できることを示し、その理由を考察しています。

すなわち、日米金利差を埋め合わせて両国での運用が等価となるように円ドル相場が動くとき、現時点でとられるべき相場に、円ドル相場は決まるということです。

この場合、円ドル相場を長期金利差で回帰した式の、長期金利差にかかる係数は、金利差が解消され為替相場の予想運動が停止するまでにかかる時間に相当することになり、実際推計された17.3年(線形近似ケース、対数線形で回帰した場合は12.2年)は、10年もの国債の利回りを長期金利として採用した場合の実証結果がよいことと整合しています。

また、定数項は、収束後の均衡為替相場に相当することになり、実際推計された88.9円/ドル(線形近似ケース、対数線形で回帰した場合は93.2円/ドル)は、ビッグマック指数や購買力平価で見た為替相場とほぼ同じです。

よって本稿の推論には信憑性があると思われます。

ダウンロード(pdf):朴勝俊・松尾匡「ある期間の名目円ドル為替レートが米日金利差でよく説明できるのはなぜか」『立命館経済学』73巻3号、2024

森永卓郎さんのご逝去を悼みます。

本会共同代表 松尾匡、朴勝俊、西郷甲矢人

本会同様のプログレッシブな立場からの反緊縮経済政策の主張を牽引してこられた森永卓郎さんが2025年1月28日に逝去されました。
森永さんは、主要メディアにおいて、この立場からの主張ができる日本でほぼ唯一の論客でした。孤軍奮闘して道を切り開かれてきた功績と、今喪失したものの大きさに、身が震える思いがします。

本会の当ブログの記事は、2016年9月16日、森永卓郎さんが、本会共同代表である松尾匡、朴勝俊といっしょに、名前を連ねてくださったレポート「民進党が勝利する経済政策のために」から始まっています。

このレポートでは、選挙で民進党に票が入らず、安倍自民党が勝ち続ける原因を分析し、それは、安倍政権になって民主党政権時代よりも多少は景気が上向いて人々の生活状況がましになっているのに、民進党の方は人々の経済苦境を改善させる景気拡大の公約を打ち出しておらず、民主党政権時代の苦しかったイメージを払拭できていないせいだとして、安倍政権を上回る積極的な経済政策を打ち出すことを提唱しています。
当時、民進党の代表選挙が行われていましたので、私たちは三人の候補者、蓮舫さん、前原誠司さん、玉木雄一郎さんのそれぞれにこのレポートを送付して、政策の転換を訴えたのでした。
しかし、どなたからも採用されることはありませんでした。

その後、本会の主要メンバーが中心となって、反緊縮経済政策を掲げる候補者を応援する選挙キャンペーンとして「薔薇マークキャンペーン」を立ち上げた時、森永さんは「呼びかけ人」として加わってくださいました。

その後、森永さんご自身の変わらぬご尽力もあって、世論の中に反緊縮経済政策の考え方が一定ていど浸透していき、その政策を鮮明に掲げたれいわ新選組が結成・躍進したり、共産党はじめ他の野党もこれまでよりも人々の経済状態に力点を置いた主張をするようになったりしてきました。

現在、倒産件数が増え続け昨年は1万件にのぼる中で、政府、日銀、野党第一党党首そろって財政均衡と利上げを志向する局面を迎え、プログレッシブな反緊縮経済政策を求める運動は正念場を迎えています。

このようなときに森永さんを失ったことは大きな痛手です。癌発覚以降の精力的な仕事ぶりには鬼気迫るものを感じましたが、それが実を結んだ世の中をご覧になれないままになったことは痛恨の極みです。つつしんでご冥福を祈ります。

森永さんが亡くなった穴を埋めることは到底不可能だと思いますが、各自できることをしていくことで、遺志を受け継いでいきたいと思います。

2025年1月30日

<翻訳> エリザベス・ウォーレン、バーニー・サンダースほか「米国議会左派議員10人のFRBパウエル議長に対する書簡(2023年5月1日)」

ウォーレン、サンダースらアメリカの10人の民主党のプログレッシブ派・リベラル派の連邦議会議員が、5月2日・3日の、連邦準備制度理事会(Fed, アメリカの中央銀行)の連邦公開市場委員会(FOMC, 金融政策決定機関)会合に先立ち、同理事会のパウエル議長に対して、利上げの停止を訴える書簡を送りました。本会共同代表の朴俊勝関学教授がその全訳を行いましたのでここに掲載します。

サンダースらはここで、パウエル議長の利上げ計画を、失業者を増やすことでインフレを抑えようとする試みだとし、
・インフレはすでにピークを越え、銀行破綻もインフレ鎮静要因となる。
・Fedが狙う1%の失業率上昇は1%にとどまらないのが歴史の常だった。
・目下のインフレは供給サイド要因によるもので、金融政策では抑制できない。
・利上げで不況になれば中小企業や弱い立場のものが真っ先に打撃を受ける。
といった理由で、利上げを思いとどまるよう主張しています。

日本の現状から見れば、アメリカの経済状況ははるかに需要が拡大していて、利上げの処方箋の適用範囲に入っているようにも見えるところですが、現地の左派からはなお、利上げによる需要抑制での失業や中小企業倒産のリスクが大きく認識される状況にあるわけです。
そうすると、まだまだ所得が停滞し需要が不十分な日本では、利上げの選択肢などますますあり得ないということになるでしょう。インフレはアメリカよりもはるかに純粋に供給側要因によるもので、金融政策では抑制できないのに、なおも利上げでそれを抑えようというのは、アメリカで危惧されるよりもはるかに、失業や中小企業の倒産を増やし、弱い立場の者に多大な犠牲がかかることをいとわない政策であるということになります。
しかるに日本においては、比較的大きなリベラル派や左派の政党が、この書簡の主とは逆に、利上げでインフレを抑制することを主張しているところに、実にやりきれない現実があると感じています。
(松尾匡)

SandersWallenLetterToFebFed.pdf

実質実効為替レートは高いほうがいいのか?

最近、日経が実質実効為替レート(REER)の安さを批判するような記事を連発していました。世間一般にも、専門家も含め、これが高いほうがいいとするような誤解が多いようです。

本会共同代表の朴勝俊関西学院大学教授が、こうした議論を批判する文章を書いていますので紹介します。実質実効為替レートとは何かということから、丁寧に説明しています。

朴勝俊「実質実効為替レートは高いほうがいいのか」

また朴共同代表は、このことについてのツイートも連投しています。その中には、BISのペーパーでの関連する説明の訳も含まれています。

私(松尾匡)からも一言言えば、デフレが名目の円高で相殺されないと当然REERは安くなります。デフレと同じだけ名目の円高になりでもしたら、デフレスパイラルも極まれりというところで、大変なことになります。デフレの間、REERが低下し続けてよかったのです。

しかも、そのかん貿易にしめる中国の割合が高くなっています。中国のインフレが名目の元安で相殺されない限り、やっぱり円の実質実効為替レートは下がります。

人民元は長期的に高まっています。このかんたくさん貿易黒字を出していて、ほっといたら元がすごく高くなるところ、中国の通貨当局は、そうならないように元を作って売って外貨を買って、元高のスピードを和らげてきたので、ゆるやかな元高とインフレがともに起こってきたわけです。

そしたら円の実質実効為替レートは安くなって当然です。

オンラインセミナー「中小製造業企業の能力構築・競争力と価格競争:欧州・北欧イノベーション政策から考える中小企業政策への含意」

コロナ以降、政府側シンクタンクや政府の諮問会議から、中小企業の「新陳代謝」を進め、「生産性」を高めるところだけを選択支援すべきだと大合唱が起こっています。典型例は、日本の生産性が低いのは小規模な企業が多すぎるからだとして、中小企業半減論を唱えるデービッド・アトキンソンさんの議論です。この人をブレーンとして仰いできた菅首相は、就任後、俄然こうした路線に乗り出して、そのための法律や税制の整備を始めています。

しかし、日本の中小企業ははたして本当に生産性が低いのでしょうか。単位労働あたりの付加価値が低いことは、規模が小さいせいで技術力が劣っていることの現れなのでしょうか。

名古屋工業大学の徳丸宜穂教授は、福祉とイノベーション創出を両立させる、新自由主義的でない道を求めて北欧(フィンランド)の実例を検証し、地域経済の中で技術や新製品や雇用を生み出す仕組みを、日本や東アジアの実例から分析してきました。

https://www.tokumarunorio.info/

この際、徳丸先生から、愛知県の中小製造企業の調査分析から得られた知見と、フィンランドの中小企業政策のお話をおうかがいし、菅・アトキンソン路線の当否を検討する手かがりとしたいと思います。

中小製造業企業の能力構築・競争力と価格競争——欧州・北欧イノベーション政策から考える中小企業政策への含意

お話 徳丸宜穂さん(名古屋工業大学)

日時 2021年3月31日(水) 14時から15時30分

受付締め切り当日正午

セミナーはズームを用いて行います。参加ご希望のかたは、検索できるように必ず表題に「PEPセミナー参加希望」と書いて、下記問い合わせ先メールアドレスにご通知ください。当日の開始およそ1時間前にZoomのURLをお送りします。

お問い合わせ: 松尾匡 matsuotadasu[at]gmail.com            (atはアットマーク)

吉岡真史さんオンラインセミナー「財政のサステイナビリティについて考える」

吉岡真史さんは、長年内閣府で経済分析の仕事をされてきたかたで、折々の日本経済分析や旺盛な書評やタイガースの応援記事のブログは一部に根強いファンをお持ちです。

http://pokemon.blog2.fc2.com/

この吉岡さんが、この四月から、立命館大学経済学部に日本経済論の教授として赴任されました。

コロナ禍もあって半年以上止まっていました本会のセミナーですが、今後吉岡さんに末長いご協力をお願いする機会として、下記のとおり、オンラインでご研究の報告をお願いすることにしました。

財政のサステイナビリティについて考える

お話 吉岡真史さん(立命館大学)

日時 20201027日(火)午後5時~

受付締め切り1027日午後12:00

セミナーはZoomを用いて行います。

テーマは、財政の持続性をめぐる諸議論、特に動学的非効率性の問題といわゆるMMT命題について検討するものです。詳しくは次のリンクをご覧ください。

Yoshioka_sustainability

参加ご希望のかたには、当日正午までに以下のURLにアクセスして、別ウインドウで開く申し込みフォームから、お名前とメールアドレスを登録してください。当日の開始およそ1時間前にZoomURLをお送りします。

https://forms.gle/baU9HckYRYh3dDiN7

お問い合わせ: 松尾匡 matsuo-t[at]ec.ritsumei.ac.jp             (atはアットマーク)

<レポート015>商品貨幣論および外生的貨幣供給説の誤り -『 マンキュー マクロ経済学』 を例として

シェイブテイル&朴勝俊
2020年 3月 18日

大学で用いられているマクロ経済学の教科書は、ほとんどが「 商品貨幣論 」 と 「 外生的貨幣供給説 」 に立っています。 これらの考え方は、貨幣量は有限であり、預金の結果として貸出が可能となる、言い換えれば家計の貯蓄が企業や政府の債務を支える という間違った議論につながります。現在の主なマクロ経済理論が現実をうまく説明できないのは、この 2つの考え方に立脚しているからだと考えられます 。
本稿では、大学等で広く使われている教科書のひとつである『マンキュー マクロ経済学 I 入門編 (第 3版 )』 に記された貨幣論を批判的に検討し、その 誤りを明らかにします 。

ダウンロード How-Mankiw-is-wrong

田中信一郎先生のご質問にお答えして

田中信一郎先生が書かれた良書『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』に関して、私が紹介のツイートをしたことについて、田中先生からツイートでご質問を頂いていることに、ある方からお知らせいただいて気づきました。文字数が制限されたツイッターは回答に向かないので、以下、誤解が生じないよう、先生からのツイートを全て引用した上で、ご質問にお答えさせていただきます。

Answer_to_mr_Tanaka

延期です! 勉強会企画「協同組合が変える韓国の経済構造」

下記企画は、京都市内のコロナ感染拡大により、延期になりました。

これが、経済の民主化だ!協同組合が変える韓国の経済構造
~ムン・ジェイン大統領とパク・ウォンスン ソウル市長の政策と市民運動を事例に~

●2020年3月8日(日)14:30~17:00
キャンパスプラザ京都  6F 第1講習室
京都市下京区西洞院通塩小路下る東塩小路町939
市営地下鉄烏丸線、近鉄京都線、JR各線「京都駅」下車。徒歩5
●参加費:無料(カンパ歓迎)

―――資本より人を、競争より協同を―――
韓国では2012年に協同組合基本法が施行され、5人集まれば出資金の制限なくあらゆる形態の協同組合が設立できるようになった
その後の1年間で設立された協同組合は3000以上、創出した雇用は約1万といわれる。この法律が成立した背景にはどんな運動があったのか?
協同組合は韓国の経済を、政治をどう変えたのか?その核心に迫る

■講師 共同連運営委員 柏井宏之(かしいひろゆき)■
1940年、朝鮮半島生まれ。
生活クラブ教育担当で多くの韓国からの研修生を受け入れ、彼らが帰国後創った生協と、東京・神奈川の生協の姉妹提携を担当。訪韓20回以上。
朴元淳・現ソウル市長とは、李明博大統領時代に弾圧され起訴されていた頃から交流があり、市長2期目から本格化する社会的経済の政策にも詳しい。

■コーディネーター 生活クラブ京都エル・コープ元専務 黒岩卓美■
日本では非常にハードルの高い協同組合を2回設立した経験を持つ
現生活クラブ京都エル・コープの創立者のひとり。

■コーディネーター 立命館大学教授/ひとびとの経済政策研究会 松尾匡■
ひとびとの経済政策研究会共同代表

■司会/報告「欧米の新しい協同経済」 e未来の会共同代表 長谷川羽衣子■
前緑の党共同代表。反緊縮グリーン・ニューディールなど欧米の環境・経済政策に詳しい
。翻訳書に『黒い匣―密室の権力者たちが狂わせる世界の運命』、著書に『原発ゼロをあきらめないー反原発という生き方』など。
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
●お問合せ e未来の会HPのお問合せフォームよりご送信下さい
https://www.emirai.xyz/

主催:e未来の会 ひとびとの経済政策研究会
共催:市民社会フォーラム 協同組合運動研究