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<翻訳> エリザベス・ウォーレン、バーニー・サンダースほか「米国議会左派議員10人のFRBパウエル議長に対する書簡(2023年5月1日)」

ウォーレン、サンダースらアメリカの10人の民主党のプログレッシブ派・リベラル派の連邦議会議員が、5月2日・3日の、連邦準備制度理事会(Fed, アメリカの中央銀行)の連邦公開市場委員会(FOMC, 金融政策決定機関)会合に先立ち、同理事会のパウエル議長に対して、利上げの停止を訴える書簡を送りました。本会共同代表の朴俊勝関学教授がその全訳を行いましたのでここに掲載します。

サンダースらはここで、パウエル議長の利上げ計画を、失業者を増やすことでインフレを抑えようとする試みだとし、
・インフレはすでにピークを越え、銀行破綻もインフレ鎮静要因となる。
・Fedが狙う1%の失業率上昇は1%にとどまらないのが歴史の常だった。
・目下のインフレは供給サイド要因によるもので、金融政策では抑制できない。
・利上げで不況になれば中小企業や弱い立場のものが真っ先に打撃を受ける。
といった理由で、利上げを思いとどまるよう主張しています。

日本の現状から見れば、アメリカの経済状況ははるかに需要が拡大していて、利上げの処方箋の適用範囲に入っているようにも見えるところですが、現地の左派からはなお、利上げによる需要抑制での失業や中小企業倒産のリスクが大きく認識される状況にあるわけです。
そうすると、まだまだ所得が停滞し需要が不十分な日本では、利上げの選択肢などますますあり得ないということになるでしょう。インフレはアメリカよりもはるかに純粋に供給側要因によるもので、金融政策では抑制できないのに、なおも利上げでそれを抑えようというのは、アメリカで危惧されるよりもはるかに、失業や中小企業の倒産を増やし、弱い立場の者に多大な犠牲がかかることをいとわない政策であるということになります。
しかるに日本においては、比較的大きなリベラル派や左派の政党が、この書簡の主とは逆に、利上げでインフレを抑制することを主張しているところに、実にやりきれない現実があると感じています。
(松尾匡)

SandersWallenLetterToFebFed.pdf