本会共同代表の朴勝俊関西学院大学教授によるディスカッションペーパーです。ここでは、2000年以降の日本の年次時系列データを使って、為替レートが貿易収支に及ぼす影響を計量分析しています。
それによれば、実質実効為替レートが円高になると、当期の名目貿易収支への影響はほとんどないが、二期後の名目貿易収支を減少させる(赤字を増やす)効果があることが実証されたとのことです。ただし、名目為替レートが円高になったときに、名目貿易収支を減少させる(赤字を増やす)効果があることを示す「マーシャル=ラーナー条件」を推計したところ、短期的にも長期的にも満たさないとの結論が得られたとのことです。
この問題をめぐる既存研究がよくサーベイされており、また、さまざまな場合分けをして計量分析していますので、この問題に関心を持つ人には有益なペーパーとなっていると思います。
私見では、このかん輸出産業の供給ボトルネックが問題になっていたので、輸出については、円高になって減らすときの係数と、円安になって増やすときの係数が違うのではないかと思います。しかし、それを分けて計量することは、サンプル数の問題から困難ではあるとは思います。
(松尾匡, 本会共同代表)
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economic policy report 021