経済概観2024年6月号

ひとびとの経済政策研究会のメンバーの朴勝俊さんと私、松尾匡が監修するもとで、れいわ新選組の長谷川羽衣子さんが報告した、2024年6月15日付の経済概観をここに公表します。

概要

2022年以来、日本では物価高・円安が進んできましたが、ここ最近は歩みが落ち着いてきています。他方、実質賃金は減り続け、生活が苦しくなっている人も多く、消費税減税と給付金による生活底上げが必要です。また、GDP需給ギャップ(正常な生産量との乖離を示す指標)は、2023年の第2四半期にいったんプラスとなり、これを受けて新聞や一部野党は、すでに日本はインフレだ、今後もっとインフレになる、だから金利を上げて円高にすべきだ、といった主張をしてきました。しかしその後、再びGDP需給ギャップはマイナスとなりました。消費を中心とした内需の面では、すでに後退局面に入ったと思われます。また、マーケットの予想物価上昇率であるブレイクイーブン物価上昇率は物価安定目標に達しておらず、マーケットは過度な物価上昇が続くとは予想していないことが分かります。従って、当面は現金給付や減税で家計を支えながら、金融緩和を継続しつつ物価上昇以上の賃上げを実現することが何よりの急務です。他方で、人々の所得と内需が停滞しているのに、輸出主導で経済が物価安定目標の上限に達してしまう可能性にも引き続き目配せが必要で、万博など不要な事業に労働力や資材などの資源が吸い取られるのを止める必要があります。また、急な円安によって、利益を受ける人々や企業と、苦しくなる人々や企業の間に格差が広がっています。当面は、現金給付や消費税廃止で円安の負の影響を打ち消すとともに、円安による利益を全ての人が受けられるよう、大幅な賃上げや待遇改善が必要です。

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