本会共同代表の朴勝俊関学教授と私、松尾匡立命館大教授の共著の研究ノート「ある期間の名目円ドル為替レートが米日金利差でよく説明できるのはなぜか」が公表されましたのでご紹介します。
ここでは、円ドル相場が、10年もの国債の利回り差という意味での日米の長期金利差によってよく説明できることを示し、その理由を考察しています。
すなわち、日米金利差を埋め合わせて両国での運用が等価となるように円ドル相場が動くとき、現時点でとられるべき相場に、円ドル相場は決まるということです。
この場合、円ドル相場を長期金利差で回帰した式の、長期金利差にかかる係数は、金利差が解消され為替相場の予想運動が停止するまでにかかる時間に相当することになり、実際推計された17.3年(線形近似ケース、対数線形で回帰した場合は12.2年)は、10年もの国債の利回りを長期金利として採用した場合の実証結果がよいことと整合しています。
また、定数項は、収束後の均衡為替相場に相当することになり、実際推計された88.9円/ドル(線形近似ケース、対数線形で回帰した場合は93.2円/ドル)は、ビッグマック指数や購買力平価で見た為替相場とほぼ同じです。
よって本稿の推論には信憑性があると思われます。
ダウンロード(pdf):朴勝俊・松尾匡「ある期間の名目円ドル為替レートが米日金利差でよく説明できるのはなぜか」『立命館経済学』73巻3号、2024